子どもの歯並びに本当に影響する生活習慣(口呼吸・舌の位置・姿勢)
歯並びは遺伝だけで決まるものではありません。
口呼吸、舌の位置、姿勢といった日常の習慣は、成長期の顎や歯列の発育に直接影響します。
ここでは、歯列や噛み合わせに関わる3つの機能について、医学的根拠に基づき整理します。
1. 口呼吸は歯列と顎の成長に影響します
本来の呼吸は鼻呼吸です。口呼吸が習慣化すると、舌の位置や筋肉のバランスが変化し、歯列や上顎の幅に影響が出ます。
1-1. 舌が下がり、上顎への支えが弱くなる
口呼吸では、空気の通り道を確保するために舌が下の位置になりやすくなります。
舌は本来、上顎の口蓋(こうがい)に軽く触れていることで上顎の幅を支えています。
舌が下がるとこの支えが弱まり、上顎が狭くなりやすくなります。
1-2. 上顎の狭窄が歯列へ影響する
上顎が十分に広がらないと、前歯のスペース不足、交叉咬合(こうさこうごう)などが起こる可能性があります。
また、口呼吸が続くと唇の筋の緊張が変化し、前歯が前方へ傾く要因にもなります。
2. 舌の位置(舌位)は歯列の形に影響します
舌は常に歯や顎に力をかけているため、その位置は歯列の安定に関わる重要な要素です。
2-1. 正しい舌位の役割
安静時、舌が上顎の口蓋に広く触れている状態が正常とされています。
この状態は上顎の幅を保ち、歯列アーチの安定に寄与します。
2-2. 低位舌(ていいぜつ)による影響
舌が下の位置にあると、上顎の内側からの支えが弱くなり、歯列が狭くなる傾向があります。
また、開咬(かいこう)や前歯の傾斜につながる場合があります。
2-3. 舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)との関係
飲み込みの際に舌が前方へ力を加える癖があると、前歯に継続的な力が加わり、噛み合わせの安定を妨げます。
3. 姿勢は顎の位置と噛み合わせに関係します
頭部や体幹の姿勢は、下顎の位置や舌位に間接的な影響を与えます。
3-1. 頭部前方位による影響
スマートフォンやタブレットの使用が長時間続くと、頭が前方に位置する姿勢になりやすくなります。
頭部が前に移動すると、下顎は後方に位置しやすくなり、噛み合わせの深さや上下関係に変化が生じることがあります。
3-2. 姿勢が舌位に影響する理由
姿勢が崩れると舌の安静位も変化し、低位舌の状態が持続しやすくなります。そのため、姿勢と舌位は互いに関連しており、歯列の変化を助長する可能性があります。
4. 日常の習慣による影響を早期に把握するために
生活習慣による力は小さくても、成長期に長期間続くと、歯列や顎の形に変化が蓄積されます。
以下のような兆候がある場合は、口腔機能の確認が必要です。
- 口が常に開いている
- 舌の位置が下の方にある
- 前歯の噛み合わせが安定しない
- 上顎が狭く見える
- 鼻呼吸が難しい状態が続いている
当院では、呼吸・舌位・姿勢を含めた総合的な機能評価と、成長を利用した咬合誘導(こうごうゆうどう)を基盤に、将来の安定性を重視した計画を行っています。
5. 機能面で気になる点があればご相談ください
呼吸方法や舌の位置、姿勢は日常生活に深く関わるため、変化に気づきにくいことがあります。
早期の評価により、成長を活かした自然な歯列形成につながる場合があります。
Delicate. Natural.