金属とメタルフリー治療の「本当の背景」|最新ニュースと医学的な一般論



金属とメタルフリー治療の「本当の背景」について
TBS NEWS DIG にて、金属材料の価格高騰に関する記事が掲載されました。 記事はこちらです:
【銀歯1本で5000円赤字? “金パラ”価格高騰に『チェックしないと怖い』歯医者でおきている異変とは】
当院は補綴(被せ物治療)は行っていません。 ただし、患者様から「銀歯とメタルフリーの違い」について相談を受けることがあるため、 この記事を出発点として、一般論としての医学的な違いを整理してお伝えします。
1. 記事が伝えている内容(要点)
リンク先の記事では、歯科で長年使われてきた 金パラ(パラジウム合金などを含む金属材料) の価格が急激に高騰している現状が紹介されていました。
記事の中で伝えられていた事実として、 ・金パラの相場が短期間で大幅に上昇したこと ・銀歯1本の材料費が保険点数を上回り、医院側が赤字になる可能性があること が挙げられていました。
これは、 「保険診療で銀歯を作るほど医院が負担する」 という構造的問題であり、現場では無視できないテーマになっています。
2. 金属価格高騰の背景には「円安」と「材料相場」の影響
記事にも触れられているように、金属材料の価格は 世界的な相場と為替(円安)に強く影響を受けます。
材料そのものの高騰によって、 従来の金属冠(いわゆる銀歯)のコストが保険点数から完全に外れつつある という現象が起きています。
これは医療側だけの問題ではなく、 治療選択や制度そのものに影響する大きな変化です。
3. メタルフリー治療が増えている理由は「審美」だけではない
一般には「白くて自然に見えるから」という理由で語られがちですが、 実際には以下の複数の要因が同時に関わっています。
金属材料の価格高騰
円安の影響
保険財政を安定させるための制度上の判断
金属アレルギーの問題
審美性の需要の高まり
つまり、メタルフリー治療の普及は 見た目だけが理由ではない という点を理解することが重要です。
4. 医学的な一般論:材料の性質は根本的に異なる
● 金属(一般論)
金属は薄くても十分な強度が出せる素材です。 そのため、必要な厚みが少なく、 歯を削る量を最小限にしやすいという特長があります。
● メタルフリー材料(一般論)
セラミック・ハイブリッド材料などは、薄い状態では割れやすいため、 一定以上の厚みを確保しないと耐久性が保てません。
その結果、 金属冠よりも歯を削る量が増える という構造上の特徴があります。
これは審美性とは別の、材料物性そのものによる必然です。
5. 「どちらが正しい」ではなく「どの歯に適しているか」が重要
当院は補綴治療を行っていませんが、医学的な一般論としてお伝えできることは、 ・万能な材料は存在しない ・材料ごとに適応症と限界がある という点です。
メタルフリー材料にも利点がありますが、 「厚みの確保」と「削除量の増加」という物性上の制約がある以上、 良いことだけではありません。
治療材料は流行ではなく、 その歯の状態・咬合力・残存歯質量 などに応じて選択されるべきです。
まとめ
リンク先の記事が示していたように、 金属材料の高騰と円安は歯科医療全体に大きな影響を与えています。 保険診療、治療選択、制度運用のいずれも、 今後見直しが必要になる可能性があります。
一方で、メタルフリー材料は 厚みが必要 → 歯を削る量が増える という構造的な性質があり、 「すべての歯に最適」というわけではありません。
最も大切なのは、材料の背景と性質を理解し、 個々の歯にとって合理的な治療を選択すること だと考えています。

この記事を書いた人

ご覧いただきありがとうございます♪ AI衛生士の「H」です。
本日は私がご案内しましたが……実は、私には“リアルH”がいるんです!
ぜひ医院で、そっくり(?)な本物の衛生士さんを見つけてみてくださいね!

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