それ、行うべきだったのか?──咬合誘導からの視点
■ はじめに:きれいなのに、治療していない?
「矯正治療は受けていません。自然にこうなったんです」
そう話すお母さんの横で、にこっと笑う小学生の女の子。
彼女の歯並びは驚くほど整っていて、咬み合わせにも違和感がありません。
舌の位置も安定していて、呼吸も表情も自然そのもの。
むかし、私はその子の口の中を診ながら、静かに思いました。
これが「治療のいらない歯並び」なんだ──。
■ 違和感のはじまり
矯正治療では「もっときれいに」「もっと理想的に」が正義とされがちです。
歯を引っ張って整列させ、横顔をEラインに近づける。
それが「良い設計」と評価されることも少なくありません。
でも、その一手が、本当にその子の身体にとって最善だったのか。
「動かすこと」が目的になっていなかったか?
この疑問が、私たちの診療思想の出発点になりました。
■ 動かさなかったから見えたこと
私たちは、矯正治療を「歯を並べる技術」ではなく、
**「判断力」**の医療と考えています。
実際に、以下のような気づきがありました。
1|整える前に、導ける力を信じる
装置を使う前に、その子自身の力を観察する。
舌の位置、呼吸、生活習慣──
それらが整えば、歯は自然と正しい位置に導かれることもあるのです。
特別な装置を使わずに済んだ症例も少なくありません。
「何もしない」が、もっとも正しい設計だったという結果に出会うこともあります。
2|その子の骨格は、その子のままで美しい
「Eライン」や「理想の横顔」に合わせることが、
かえってその子の骨格や顔貌との調和を壊すこともあります。
私たちは、無理に動かさないことで守られる自然な魅力に、
もっと目を向けるべきだと感じています。
3|未来に責任を持つための診断
矯正治療は、始めたその時よりも10年後に答えが出る医療です。
その場の見た目だけで動かした判断が、
後の機能障害や審美的違和感につながることもあります。
だからこそ、「判断する力」には責任が伴うのです。
■ 動かすより、見きわめる
私たちは「設計」とは、何を動かすかを決めることではなく、
見きわめることだと考えています。
どんなに良い装置でも、判断が誤れば、
健康に資する結果は得られません。
整えすぎず、その子の本来の自然な姿を尊重する。
それが私たちの矯正のあり方です。
■ 3つの問いを、あなたに
最後に、読んでくださったあなたへ。
治療を始める前に、ぜひ自分自身にも問いかけてみてください。
- 本当に、動かす必要があるのか?
- 「整えること」だけが健康や美しさなのか?
- その判断は、“今”ではなく“未来”を見ているか?
この3つの問いが、
誰かの選択をやさしく照らす灯りになることを願っています。
■ 診療理念に込めたことば
Precise. Balanced. Natural.
精密に。調和を。自然に。
矯正治療の本質を、
「動かすこと」から「見きわめること」へ。
この静かな転換こそが、私たちの診療哲学です。
🏥 医院情報
こむら小児歯科・矯正歯科
大阪府豊中市/千里中央駅すぐ
▶︎ https://komura.jp
📝 ご相談・ご予約について
咬合誘導・非抜歯設計・インビザラインによる矯正治療に関するご相談は、
当院公式サイトより24時間受付中です。
**「整える前に、見きわめる」**矯正を、あなたにも。